アニメについて 『ご注文はうさぎですか?』

 こんにちは、無職だよ。今日は陰気なオタクらしくアニメについて書いてみようと思う。取り上げるのは『ご注文はうさぎですか?』という作品だ。
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 このアニメは漫画を原作にして2014年に第1話が放映されたんだ。どんなアニメかというといわゆる日常系なんだ。たとえば、『ひだまりスケッチ』や『のんのんびより』と同じ系譜だと思ってくれればいい。内容はというと、これら日常系のアニメの鋳型からは特に外れていないものになっている。つまり、競争や努力や異性との性的な関係を見せないキャラクターたちが、ボケとツッコミを介した緩いコメディを展開しながら1話完結型のぬるま湯のような物語を展開していくんだ。これぞ日常系ってやつなんだ、ごちうさは。

 あらすじを簡単に説明するとこんな感じ。ある町にやって来たココアという女の子がその町の喫茶店で住み込みで働きながら学校へ通う。彼女はその明るい性格からすぐに友達もできて、バイト先の同僚の女の子たちやクラスメイトの女の子とキャッキャッウフフと日々を紡いでいく。まあ、ざっくりこんな感じ。ほんとになにも考えずに見られるアニメなんだ。

 この物語で重要なのはこのココアちゃんっていうキャラクターなんだ。学校へ通うために別の町から引っ越してくるんだけど、この引っ越してきた町ってのがすっごくファンシー。ベルギーみたいな西洋風の町並みに、カラスや小汚ないハトのかわりにかわいい野良うさぎがいるんだ。(まあカラスも多少いるみたいだけど。)アニメの第1話の冒頭ではこの町並みが美しい背景イラストとして描かれている。でもなんだかこの町って綺麗なだけで絵みたいに静止している印象を受けるんだ。(実際絵だけど。)しかし、そこに現れたるは嵐を呼ぶ女ココアちゃん。彼女はある喫茶店に惹かれて店内に入り込む。突如入店してきた彼女はそして叫ぶんだ「(この店には)うさぎがいない!!」穏やかなこの町にとって彼女は完全に招かれざる客だ。このお客を見たウェイターのチノちゃんはもうすごい唖然とした顔で呟く「なんだこの客...」でもチノちゃんの表情をみると驚きながらも古い友人と邂逅したかのように目が潤んでいて、どこか彼女のような人を待ち焦がれていた、ともとれる印象も受けるんだ。

 物語はこうして始まるんだけど、このお話、ココアちゃんという少し風変わりな女の子が突然現れて、止まっていた物語の歯車を回してくれるっていう構図なんだ。こういうのってフィクションではよくあるよね。アニメだと『NHKにようこそ!』とか、文学だと数えきれないほどある、例えば『ティファニーで朝食を』なんかだ。こう考えるとさっき触れたチノちゃんの表情には、期待や驚き、不安などなど、今後どうココアにこの物語が振り回されるんだろう、っていう示唆が大いに見受けられるね。

 こういう構図を持ってるてことは、この物語、ココアちゃんだけが主役じゃないんだ。そう、つまりチノちゃんの成長の物語でもあるんだ。

 いいね、突然現れた女の子が自分を導いてくれるなんてさ。オタクの理想だよ。オタクって受け身なんだ。だからいつも自分を救ってくれるものを待ってる。ホリー・ゴライトリーを、ココアちゃんを...

 二人の関係についても少し書こう。こういう話ってだいたい現れた女の子は対峙した人物を補う分身として描かれるんだ。陰と陽っていうか太陽と月っていうか。このお約束の通り、ココアとチノの関係ってのもすごく対照的(ココアは明るくチノは引っ込み思案)なんだ。だから彼女たちを二人で一つみたいな感じに見ることができる。アニメに則していうと彼女たちはコーヒーとミルクのような二人なんだ。ちなみにアニメではチノはコーヒーが飲めないんだ。きっといつかチノがコーヒー嫌いを克服するとき、そこが物語の終点なんだろうね。

 ごちうさっていうのは以上のようなお話。僕はこの作品が大好きなんだ。でもそれを説明するのってなかなか上手く言葉にはできない。なぜならこのアニメは日常系だからだ。

 一般的にフィクションって、非日常的なスリルのある物語を楽しみたいから読んだり、一種の思考実験的な感じでキャラクターを動かしてその心理を観察したいとかっていう動機で作られていると思うんだ。でもこの作品は日常系だぜ。山場もたいした人間模様もないし、あるのはちょっとしたコメディぐらいなんだ。でもなぜか見てしまうんだ。それも本気で見るんじゃなくてぼーっと眺めながらリラックスするんだ。

 僕はそこで思ったんだ。日常系から受けとるのは思想や言語的なものじゃなくてもっとプリミティブで単純な刺激なんだと。これが何に一番似ているか、っていうと音楽なんだ。僕たちは日常系を見るとき、作者の意見や思想に思いを巡らさずにただ受け止めればいい。脚本はメロディで声優の声は楽器の音色に他ならない。音楽なんだからなにも考えなくていいんだ、と気付いて腑に落ちたね。日常系アニメは音楽に最も近い表現手段。これが僕の今回の結論だ。

 今回は『ご注文はうさぎですか』について語った。興味を持った人は、せわしない日常の鎮静剤としてこのアニメをご覧になってみては。